
MSGU-005
2026.06.07
¥2,500+TAX
―CD序文よりー
匂いや、ふと耳にした音、あるいは何気ない光景によって、それまで忘れていたはずの遠い記憶が突然よみがえることがあります。
子供時代のささやかな会話、夏の日の空気、かつて暮らしていた家――普段は意識の奥深くに沈んでいるそれらの情景が、不意に鮮やかな輪郭を伴って現れる瞬間に、私は驚かされます。
夜、眠りへ向かうひとときもまた、そのような記憶がもっとも静かに姿を現す時間です。
一日の喧騒が遠ざかり、部屋の灯りを落とし、ベッドに身を委ねた時、昼間には気づかなかった感情や記憶が、闇の中からゆっくりと浮かび上がってきます。夜の静けさがそうさせるのか、あるいは眠りへ落ちていく安心感が心の奥を緩めるのか、、。その曖昧で境界のない時間の中では、過去と現在、現実と幻想とが自然に溶け合っていくように感じられます。
そして時として、それらの断片的な記憶は夢となり、さらに深い場所へと私を導いていきます。夢の中では時間も因果も曖昧になり、現実では決して出会わないはずの景色や人物が現れ、思いもよらない物語が紡がれていきます。そこには懐かしさもあれば、不安や孤独、あるいは説明のできない安堵もあります。夢とは、記憶の残響が静かに変容した、もうひとつの物語なのかもしれません。
《Sueño》とは、スペイン語で「眠り」あるいは「夢」を意味します。
このアルバムでは、眠りへ落ちる直前にふと呼び覚まされる記憶の断片、夢の中で形を変えてゆく感情、そして夜の静寂に漂う淡い情景を、16の小さな物語として集めました。